もうそうびと

2021.10.15 空き家を借りた人

妄想を現実にしてきた女性
cinnamon cafe | 小島芳さん

今回のもうそうびとさんは・・・

どうもこんにちは、ライターのゆいです。

妄想人がいるという噂を嗅ぎつけ、今回お邪魔したのは熊谷にあるcinnamon cafe(シナモンカフェ』さんです。

空き家を改装したというこちらのお店は名物のシナモンロールをはじめ、カレーなどの食事も提供するこじんまりと温かな雰囲気ながらも、随所にセンスを感じる素敵なお店。こういうお店、大好きなんですよね。何時間でもいたくなっちゃうような。スマホやPCを触るんじゃなくて、ついまったり本でも読みたくなっちゃうような。

そして、取材させていただいたのは、店主の小島芳さん。

とても明るく、エネルギッシュで、またすぐに会いたくなるような不思議な魅力をもった方でした。風の噂で聞いた話ではベルギービールが大好きだという初対面からそのパワーに惹きつけられてしまった小島さんという女性が空き家でお店をはじめたきっかけや、小島さんの過去・現在・未来の妄想に今回は迫っていきたいと思います!

シナモンロールに情熱を注ぐ

小島さんは、今のお店を開く前に、熊谷の商工会議所が運営する創業者育成のプログラムに参加しチャレンジショップとしてお店を出していました。今から20年ほど前、20坪を8区画に分けたスペースに古着屋、エステサロンのチャレンジショップが立ち並びました。その中で、3坪ほどの小さなカフェを開いたのが、スタートでした。

 

小島さんが提供していたのは、今のcinnamon cafe(シナモンカフェ』でも大人気のシナモンロール。なんでも、年に2回ほど旅行で行っていたハワイで食べるシナモンロールにどハマりしたことがきっかけなんだとか。その当時は日本にはシナモンロールは未上陸でした。

 

こんなに大好きで仕方ないのに、どこにも売られていない → だったら自分で作っちゃえ!というイノベーティブな思考回路で自分でも作り始めたんだそうです。ハワイに行くたびに、冷蔵庫がいっぱいになるほどのシナモンロールを爆買いして持って帰ってきは、その味を何度も確かめながら、何十回も、何百回も試行錯誤しながら、究極の味を追い求めたんだとか。

 

なんというシナモンロールへの愛と情熱!そして一流の職人ばりのストイックさ。自身で納得のいくシナモンロールをついに完成させ小さなカフェで、コーヒーなどのドリンクと共に提供し始めました。

 

カウンターしかない小さな小さなお店でしたが入れ替わり立ち替わりの激しいチャレンジショップの中で契約で決まっている2年間ずっとお店を出し続けることができたそうです。最初、商工会議所の方にお店の計画を説明したとき、おじさま方にかなり怪訝な顔をされたそうですが、お店の売り上げは上々。チャレンジショップの先を見据え、小島さんの妄想旅が始まります。

「妄想不動産」は実は20年前からあった!?

「妄想不動産」は、空き家がどんな風におもしろく生まれ変わるか、空き家の可能性を「妄想」するものですが、なんと「妄想不動産」を20年前からイメージし、実行に移していたのが、この小島さんなのです。

 

食べるのと同じくらい旅行が好きだったという小島さん。思い返せば、小島さんは旅行先でも(たとえ友達と行っていたとしても)一人で不動産屋に行き、旅行先で空き家を探していたそうです。沖縄の国際通りに行っても、神戸の三宮に行っても、日本全国どこに行っても「ここでならどんなお店ができるだろう」と妄想し、不動産屋に押しかけていたそうです。

 

なんというバイタリティー。

 

まさか、不動産屋も旅先で寄ってくる女性がいるなんて夢にも思わなかったでしょう(笑)。旅先でいいなと思ったお店は、全部小さなお店だったそうです。あらゆる場所で営まれているお店を目で見て、イメージし続けたその経験は、cinnamon cafe』のお店づくりにも反映されることになります。

 

ただ、旅先の不動産屋では「空き家になる頃には次の人が決まっている」と言われることがほとんどでした。そして、不動産屋で張り出されている募集中の物件は借り手のいない、あまり良くない物件だと気づきます。小島さんは「それだったら、不動産屋に頼らず自分で見つけるしかない」と決めたそうです。

 

小島さんは旅行先でも妄想するくらいです。そんな方が自身の本拠地である熊谷で妄想しないわけがありません。チャレンジショップは2年で出なくてはいけなかったのでチャレンジショップを営みながら、自分がお店を開くための空き家を探し始めます。ときには歩きながら、ときには自転車に乗りながら、街の雰囲気を肌身で感じ、すでにお店があって空く予定のない物件でも「私だったらここでこんなことをしたいなー」と思いを馳せていたそうです。

 

しかし、気になる物件の大家さんに「貸してください」と頼みに行っても

「わざわざ貸さなくても生活が出来ているから面倒くさい」

「綺麗にして返してほしいから飲食店が入るのは嫌だ」

「近所とのトラブルがあったら困る」といった理由で断られてばかりでした。

しかし、そんな小島さんの妄想が実を結ぶ時がきます。今のカフェの前身は古本屋さんだったそうですが、ずっと借りたいと思っていたお気に入りの場所でまだ本屋が残っているにも関わらず、大家さんを訪ねて行きました。当然ながら、最初は断られたものの、何度も足繁く通う小島さんの情熱が通じついに空き家として借りる許可をいただいたそうです!

 

最後は小島さんの粘り勝ち!ここまででもすでに短編映画ができそうですね。笑

憧れの空き家でお店をスタート

小島さんは、断固として不動産屋の力を借りず、賃貸契約書も自分で用意し、念願のお店をオープンする準備を進めます。まだ「DIY」という言葉が流行ってないどころか、「DIY」という言葉自体もなかった時代にお店の壁も、インテリアも、照明も、すべて自分で改装したと言います。

壁はダイソーのコテを使い、すべて自分で塗装をし、机も一枚板を買ってきて組み立て、椅子もジョイフル本田で購入し、高さを自分で調整、玄関のタイルも、ジョイフル本田で割れたタイルが安く売っているのを見つけて、自分でデザインし、照明もジョイフル本田のアンティークコーナーで見つけたもの・・・いや、ジョイフル本田、万能か!

こうして、紛うことなくすべて手作りのお店が完成しました!すべて小島さんお気に入りの内装ですがその中でも1番のお気に入りは「窓から見える風景」だそうです。窓枠やカウンターなどは、チャレンジショップでつながりができた建築士さんに作ってもらったそうです。窓から見える木漏れ日の感じがとても素敵でした。

 

『cinnamon cafe』を始めるにあたり、

お客さんも一から集めていかなければ、と当初考えていた小島さんですが蓋を開けてみると、チャレンジショップ時代のお客さんがしっかり付いてきてくれたと言います。

常々思うんですけど、ファンってどこまででも、どんな状況でもついてきてくれるものなんですよね。コロナ禍であっても、ちゃんとファンがいるお店ってお客さんが途絶えることはない。お店と味と、そして小島さんのお人柄に、私と同じく惹かれたお客さん達がずっと応援してくれたんだと思います。

 

さて、肝心のcinnamon cafe』のメニューについても少し触れたいと思います。一番人気は、もちろんこだわりのシナモンロール!なんと取材でちゃっかりいただいてしまいました!

あの・・・取材させていただいたからとか関係なく、食べ終わるのが寂しくなるくらい本当に美味しかったです。もっとガツンとシナモンがくるのかなと思っていたんですけど優しくふわっとシナモンの風味が口の中に広がる感じ。甘さの加減もどストライク!全然くどくなく、パクパクと食べ進んでしまい、あっという間に食べ終わってしまいました。

 

これはまた食べたくなりますね。絶対プライベートでまたお邪魔します。多くの人に愛され続けて、これからも愛され続けるであろう、ザ・看板メニューでした。

 

シナモンロールの他にも、米粉でできたグルテンフリーのパンやカレーなども提供しています。最近、よく耳にする「グルテンフリー」。テニスプレーヤーのジョコビッチ選手も取り入れていることで有名になりましたね!小島さん自身、グルテンフリー生活を続けてみているそうですがなんと1年間で花粉症が出なくなったと言います。そんな注目のグルテンフリー食材は、通販ではもちろん手に入りますが、無添加の焼きたての米粉パンが購入できる場所は、特に熊谷ではなかなかありません。

 

美容に関心のある若い女性や、小麦アレルギー持ちのお子さまがいる主婦の方はもちろん60歳くらいの年配の方も小島さんの米粉パンを求めてお店に訪れるそうですよ。では、カレーはどうして始めたのでしょうか?

小島さんは、「自宅カフェ」というものがブームになってからというもの、比較的簡単に作れるカレーは、多くの「自宅カフェ」で出されることになったと言います。ただ、小島さんはやはり一味違います。

「簡単だからやるなんて、それじゃ面白くないじゃないか!」と思いだったら、「グリーンカレー」に挑戦してみるのはどうかと思いつきます。思い立ったらすぐに行動!小島さんのパッションと、ストイックさがここでも炸裂します!

あらゆるグリーンカレーのお店を食べ歩きしただけではなく、本場のタイにも行き、4泊5日ずっとグリーンカレーだけを食べ続けて研究したそうです。研究に研究を重ねて完成した自慢のグリーンカレー。おそらく、熊谷では一番最初にグリーンカレーを出したお店ではないでしょうか?ぜひシナモンロールだけではなく、カレーも召し上がってみてくださいね!

 

 “もうそうびと”の次の妄想

cinnamon cafe』を開いて17年。小島さんは「カフェはいろんな人の居場所になる」と語ります。cinnamon cafe(シナモンカフェ』は、多世代の方を受け入れることができるような癒しの空間を目指したそうです。

小島さんの内面に秘める情熱、その熱さがお店の雰囲気に漏れ出すのをなんとか抑え込み(笑)誰が来ても落ち着けるような、まったりと時間が流れる空間をつくったそうです。

熊谷の女性フリーランスの第一人者とも言える小島さん。今でこそ、熊谷にもエネルギーに溢れる元気な女性が活躍できるフィールドができつつありますが、小島さんのような存在が先駆けとなっているんだと思います。

 

小島さんの妄想を現実にしてきた力がたくさんの人に元気を与え、熊谷を盛り上げてきたのかもしれません。

そんな小島さんの気になる次の妄想は・・・

他のお店もやってみたいなと思いつつ、まだ色々な妄想をストックしている段階のようです。コロナ禍で、毎日宿題を課されているような怒涛の日々を乗り越えてきた小島さんが

 

今改めて決めていることは

「本を読むような方が入れる雰囲気をずっと続けて行く」こと。

最近、カフェというと”若い人たちのもの”というイメージが少し強くなってきていますが、50-60代の方がふらっと一人で来ていただけるような場所も必要です。そんな人たちの居場所であり続けることも大切にしていきたいと熱い想いを語っていただきました。

 

妄想 ー もはやそれは小島さんのライフワークなのかもしれません。小島さんがどんな妄想をしてもきっと多くの人が喜ぶような素敵なことに繋がっていくんだろうなと思いました。

 

小島さんの未来の妄想にこうご期待!最後までお読みいただきありがとうございました!

あーーー小島さんのシナモンロール食べたい・・・